地図に残る仕事から、未来の地図を創る仕事へ。
宇野重工株式会社
代表取締役社長 宇野 雄介
1973年、三重県松阪市生まれ。同志社大学法学部卒業後、京都で商業施設や専門店の設計・施工を手掛ける会社で営業・プロジェクトマネージャーを担当。2013年に宇野重工株式会社へ入社し、営業本部長、常務取締役を経て、2020年9月に代表取締役社長に就任。
橋梁、水環境、補修保全という三本柱
当社は、鋼橋と横断歩道橋の新設(橋梁事業)及びそのメンテナンス(補修保全事業)と、水門や付属設備の新設・補修(水環境事業)という3つの事業を営んでいます。
明治41年に鍛冶屋として創業し、農機具から水門へ、そして横断歩道橋や橋梁へと扱う製品も会社の規模も大きくなってきました。特殊な技術と経験を要する橋梁建設は、建設業の中でもニッチな分野で、当社の所属する日本橋梁建設協会において、全国規模で橋梁工事を請け負っている正会員会社は31社しかありません。
当社は、三重県松阪市という食や商人で名高く、橋梁とは縁のなさそうな場所に本社がありますが、東北から九州まで全国津々浦々で橋梁工事を手掛ける、知る人ぞ知る会社だと自負しています。
未来地図創造カンパニー
「未来地図創造カンパニー」という言葉は、私が社長に就任する前の2019年に全社規模で実施した研修において創り出した宣言の一節です。
その研修では、翌年に社長交代を控え、新たなスタートを切る当社の社訓やキャッチコピーなど、社員の頭の中にあるもろもろを言語化しました。その中で、私の発案で採用されたのはこれだけです。少し寂しくもありますが、そんな社員たちを頼もしく思っています。
建設業は「地図に残る仕事」をしていると言われますが、この言葉には、現在事業展開している物理的な構造物だけではなく、「未来の地図を創る仕事」をしたいという思いが込められています。
橋梁は川の対岸を結ぶ物理的な架け橋や高速道路、バイパス道路を構成する道路橋として存在しています。水門は河川の氾濫を防ぎ、農業に生命を与える水を供給する役割を担っています。
今後、想い描く企業像として、次世代につなぐ架け橋のような存在、日本、世界の未来の地図を創ることに貢献できる会社でありたいと願っています。
コロナで見えてきた当社における新しい働き方
近年、高度成長期に建設された日本のインフラが老朽化してきていますが、橋梁や水門も例外ではありません。今でも橋梁の新設工事はありますし、老朽化が著しい場合は新たに架け直しますが、今後は、補修保全事業がますます重視されてきます。
私たちの仕事は、新設の橋梁は、本社内の工場で製造した橋梁を運搬して現地で据え付ける。補修保全の場合は、基本的に現場で橋梁を修繕していきます。水門の仕事も同様です。
新設、補修保全に関わらず、当社が請け負う現場は全国に点在していますので、現場での施工に従事する技術者は、必ずしも本社に通勤する必要はなく、また事業所に通勤できる範囲から採用する必要もありません。
他方、コロナ禍に見舞われたことで、自宅や各現場からオンラインでのミーティングが可能となり、より一層、事業部の関係が親密な状況を創り出すことができました。
そして、自宅から最寄りの現場に出向くという、大手ゼネコンでなくても全国に現場がある当社ならではの新しい働き方が見えてきました。
チャレンジ精神、ものづくり魂、感謝の気持ち
新卒でも中途でも、採用に際しては3つのことを重視しています。
1つ目は「チャレンジ精神」です。採用時だけでなく、既存の社員に対してもチャレンジ精神を持つように育成しています。まだ途上ですが、チャレンジできる環境を整備すること、チャレンジせずに無傷でいる者よりも、チャレンジして傷を負った者を評価する社風と制度を整えることが、社長である私の務めだと思っています。
2つ目はものづくり魂です。建設業はものづくりですし、ましてや当社は鍛冶屋、鉄工所が源流ですので、工場や現場に限らず、全員がものづくり魂を持っていてほしいと願っています。これからは建設業界にもICTやDXが導入され、どんどんスマートになっていきます。この流れには遅れないどころか最先端で勝負したいと思っていますが、それでも心の中にはものづくり魂が灯っている、そんな私たちでありたい。
3つ目は感謝の気持ちです。両親に感謝し、人を大切にする。住宅と違い、橋梁や水門ではお客さまの喜ぶ顔が見えにくいですが、お客さまである発注主だけでなく、地域に住まう人たち一人ひとりに感謝し、その喜ぶ顔を思い浮かべて丁寧に仕事をする、そんな集団であり続けます。
業界外からの未経験者がもたらす化学反応
以前、中途採用は業界経験者に限っていました。建設業は特殊との思い込みがあり、異業種からの転身組では続かないだろうとの決めつけがありました。しかし、最近はむしろ業界経験のない異業種からの転身者を好んで採用するようになっています。
コーチングの傾聴力で社員の意見を引き出してくれたり、「若さは宝」とばかりに業界の常識に縛られない自由奔放さで新しい取り組みにチャレンジする社員など、頼もしい限りです。
この若き業界未経験者たちが、当社内で「どうせ無理」から「もしかしたら」に発想を変えることに一役買ってくれています。社内に定着した考え方を変えることは決して容易ではありませんが、手応えを感じています。
先日も、これまでずっと長く半手作業でやっていた業務を、「もしかしてシステム化できるのでは」とベテラン社員が稟議を上げてきたので、嬉しくなって、高額でしたがその場で承認してしまいました。
現在の社員も、未来の社員も安心して働ける会社
私が社長に就任してから、「言語化する」「当たり前にしない」「何でも可能(不可能はない)」に取り組んできました。私には、現在の社員が安心して働ける会社、そして未来の社員も安心して働ける会社にする責任があります。
これから建設業界におけるICT対応やDX化が本格化しますので、それには最優先で取り組みます。さらに、SDGsに限らず、広く社会貢献できる会社を目指します。旧態然とした業界だけに、その最先端に立つ意味は大きいと考えています。そうなるためには、私たちは変わらなければなりませんので、私が変化を先導しています。
最後に、これから当社に応募してくれる未来の社員にひと言。「今どんな場所にいても、安心して宇野重工に来てください。ここには、何かがあります。それが何かは、自分で確かめてください。」