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お客様の求める空気質を作りつつ、自社の空気質も磨き続ける会社。

木村工機株式会社
専務取締役 執行役員 管理本部長 木村 晃

更新日:2022年9月14日

1961年 大阪府池田市生まれ。
1984年 甲南大学経営学部卒業後、大手監査法人および会計事務所勤務。
1993年 公認会計士登録。1996年 会計事務所開業および木村工機株式会社の非常勤監査役就任。
1999年 同社入社後は営業・製造・管理各担当取締役を歴任。
2020年 管理本部長として株式上場に貢献。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

終戦の日の翌日に創業。

当社は私の祖父が、敗戦から日本の復興に不可欠なインフラである鉄道会社のお手伝いをすることで祖国の復興に尽力しようと、終戦の日の翌日、1945年8月16日に、鉄道会社の門を叩いた日を創立記念日としています。

当初は銅、アルミ、鉄管などの資材や工具を卸売していましたが、そのうちに銅管や鉄管を利用した熱交換器で暖房機を製造してくれないかとの依頼があり、プレートフィンヒーター/クーラーを製造したことから本格的に空調機の業界に参入しました。

一時期は、大手家電メーカーの家庭用エアコンの熱交換器を全て当社が製造していたことが、当社の熱交換器の技術レベルの証だと自負しています。その後、大手メーカーが熱交換器を内製するようになったので、当社は家庭用空調の熱交換器という部品のメーカーから、業務用空調の完成品メーカーへと経営の舵を切りました。

社是に込められた思い。

戦後日本の復興に貢献するという祖父の思いから創業していますが、その思いは「われわれは 知恵と汗を礎にして 社会に貢献する」という社是にも表現されています。

当社の社是は、私達経営陣が折に触れて口にすることもあり、社内によく浸透しています。「社会に貢献する」ことは「利他の精神」ということができます。これまでは、メーカーとしてのものづくりを通して社会貢献という利他を実践してきましたが、今後は、これまで以上に人づくりに重きを置いて利他に努めたいと考えています。

具体的には、社是をもっと掘り下げて当社なりの経営哲学(フィロソフィ)へと展開して実践しやすくすることが一つ。もう一つは、現在でも部門別の損益計算や製品毎の原価計算はできていますが、それをより細かい工程別の管理会計に進化させて、各工程のリーダーがあたかも経営者であるかのように権限を持って自部署をマネジメントすることです。

このように経営者マインドを持った社員が増えることで、当社はもっと強い会社になれると考えています。

業務用空調機の専門メーカー。

家庭用空調の熱交換器の専門メーカーだった時期もありましたが、その後業務用空調機に注力して現在に至っています。大型ビルや商業施設、工場などの大規模な建造物の業務用空調機の専門メーカーはそれほど多くはありませんが、もちろん競争はあります。その中でいかにして差別化しているかと言うと、

・熱交換器を小型化・省エネ対応させることができる独自の製法と技術力
・ほぼ全ての工程を内製化していることなどによる高品質へのこだわり
・空調機というモノ売りではなく、制御機器や冷温水機までをシステムで提供し、お客様が求める空気質をお届けするというコト売り
・現在は「風を感じない空調機」という新製品に力を入れていますが、常にチャレンジと製品開発の歩みを止めない姿勢

などの強みによるものだと自負しています。それでも選考の最終段階で、施主様に認知されていないことや、上場していないために選んでいただけないことがありましたので、2020年3月に東証二部(現在はスタンダード市場)に上場しました。これには、施主様に対する認知度向上に加え、人づくりに欠かせない新卒および中途採用の人材確保という目的もありました。

プロパー社員と中途採用社員のバランスが創り出す空気質。

私が当社に入社して23年になりますが、最初の9年間は営業に従事し、その後現在まで管理本部長の任にあるとともに、製作所長を5年間兼務しました。

管理本部長に就任した際に与えられたミッションが、1つは上場準備、もう1つが幹部社員の充実です。1つ目のミッションは前職(公認会計士)の経験を活かすことができ、また多くの人たちの協力を得て達成しました。

2つ目のミッションも達成しつつあると思います。私が管理本部長に就任してから、自らが採用に携わった幹部社員は30名近くになります。製造部門から始まり、ちょうど上場準備の時期でもありましたので、内部統制の強化という観点から管理部門での採用も相当数にのぼりました。

営業部門でも他業界を経験した方が入社してくれています。感覚的には、他社での経験と実績のある人と、プロパー社員たちとの現在のバランスがちょうど良いと感じており、それが現在の当社の空気質(社風)を創り出しています。

中途採用者が起点となる社内プロセス改善。

三重県津市の河芸製作所のAさんは、大手メーカーの一次下請会社での品質保証や生産技術、ISO事務局などのキャリアを持って中途採用で当社に入社してくれました。前職では、品質や納期、ISOのマネジメントに関しても、大手メーカーに部品を納入する立場で厳しい要求水準に応えていました。

そこには下請部品メーカーならではの独特の厳しさがあり、当社の品質管理体制に彼の経験とノウハウを加えることで、当社の品質管理のレベルが上がったと感じています。

また、クレームに対しても秀逸な対応を見せてくれています。ないに越したことはありませんが、空調の設置後に現地で想定通りに動作しないことも稀にあります。

そのような場合はスクランブル対応で社員をかき集めて10-20名のチームで現地に向かいますが、彼はメンバーへの指示などの差配が際立っており、最初は取り付く島もなかった先方の担当者に、最後には「あなたが来てくれて良かった」と言ってもらえるほどで、その後は何かあったら彼が指名されるという関係性になっています。これは、彼の技術力やリーダーシップに加え、人間力のなせる業だと思います。

河芸製作所のBさんは、大手メーカーの部長職から当社に入社してくれましたが、私達が持つ大手企業部長のイメージを払拭してくれる方でした。まずコンピュータシステムに強く、当社の生産管理システムをどう活かすかというプロジェクトにおいて、大いに手腕を発揮しました。

その際、自身が詳しいからと独善的に進めるのではなく、部下を巻き込んで、部下を輝かせるマネジメントをしてくれました。また実地指導する場合は部下を呼びつけるのではなく、自らが部下の横に行って、膝を折って部下と同じ目線にまで下がって熱心に指導してくれている場面をよく目にしました。経験と知識が豊富で、周囲を輝かせるマネジメントができて、偉ぶらないという彼の人間性のおかげで、早い段階から周囲に溶け込んでいました。

同製作所のCさんも、異業種からの転職でしたが、現場経験の長い方ですので、すぐに現場に溶け込んで、入社後早い時期から活躍してくれています。

今回は、リージョナルキャリア三重の取材ですので河芸製作所のことだけを話しました。彼らのおかげで河芸製作所が内外から変わったと言われるようになったのは事実ですが、他の部署でも同じような化学反応が起こっており、正に中途採用が経営を変えていることを実感しています。

これからの木村工機。

現在、八尾製作所(大阪府)を大規模改修しています。八尾製作所の近くに高井田工場を新設し、そこへ移転して空いたスペースから順次改修する形で数年かけて全面リニューアルしている途中です。

河芸製作所の敷地内にも増築を意図したスペースがあり、そこへの増設も視野に入っています。メーカーとして技術革新のために設備投資することは当然ですが、それ以上に人づくりに自分の時間を含む経営資源を投入したいと考えています。

現在の社員もそうですが、これから当社を志望してくれる方にも「前向き」であることを求めたいと思います。「考え方×熱意×能力」が人生や仕事の結果を左右するという考え方があります。考え方に少しでも後ろ向きなマイナスが入ると、掛け算である結果がマイナスになってしまいます。

現在の社員と、これから入社してくれる社員によって、感謝の気持ち、反省の心、思いやり、利他の心に満ち溢れた前向きな空気質を追求する会社であり続けたい、そして私はそれを全力でサポートしたいと考えています。

編集後記

コンサルタント
三田 泰久

私がお話を伺う側であるにもかかわらず、聞き上手な木村専務の姿勢に2時間を超えるインタビューとなりました。

お聞きすると、コーチングを学んでおられるとのこと。なるほどと納得すると同時に、上場企業のナンバー2でありながら、貪欲に学び続ける姿勢に刺激をいただきました。

また、インタビューを通して、人づくりや人間力へのこだわりを強く感じましたが、これも3年前に閉塾するまで盛和塾で学んでおられたとのこと。同じ元塾生として、ここでも大変刺激を受けました。

コーチングや盛和塾以外にも、私が聞き出せなかった引き出しをまだまだお持ちなのかもしれません。そんな木村専務が先導する同社の空気質、それを高めるメンバーを増やしていくため、全力でお手伝いしていきたいと思いました。

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